2011年10月号特集 アートと暮す
ふらっと立ち寄った画廊でひとつの作品で出会った。古い辞書の上に中世の若い
女性の肖像が描かれている油絵。その力強いまなざしに心を奪われた。
金額を聞いてみると、上等な靴一足分くらいの値段。あるいは呑み会を2回我慢
すれば捻出できそうな金額だ。それでも悩んだが、結局、譲ってもらうことにした。
絵画を買ったのは初めての経験。著名な写真家のポスターを外しその「女性」を
置いた。このポスターもフレーム込みで1万円弱はした。若くて、まだあまり名の
知られていない作家ならば、同じような値段で「本物」を手に入れることができる。
どちらが良いか? という問題ではないが、何であれ選択肢が広がるのは歓迎すべきことだ。
その「女性」が我が家に来てから、アートを見る眼が変わった。展覧会に行っても、
自分が欲しいかどうか、という視点で鑑賞する。素敵だけどいらない。下手だけど
惹きつけられる。自分にとってどんな存在なのか。新鮮な印象を心に刻み、気に入ったら
細部まで観察する。もちろん手に入る可能性は全くないのだが。自分なりの
物差しがなんとなく出来ていくと、展覧会、ギャラリー巡りが楽しくなっていく。
今回の特集では「アートと暮す」をいうテーマで、生活の中にアートを取り入れている
人や、ギャラリーの紹介、そしてアーティストの生活についてのインタビューを行った。
投資目的や金持ちの道楽ではなく、お気に入りの洋服を買うような感覚で
ネームバリューに引っ張られずに「自分だけの作品」を手に入れる楽しさが
伝わったら幸いです。佐賀の人々が、豊かな価値観を持ったら、きっと、この街は
面白くなるのではないでしょうか。
