2013年10月号特集 少量多品種のものづくり
少量多品種のものづくり
―障がい者就労施設の商品から―
障がい者施設の商品というと、どのようなイメージがあるだろうか。安い、量が多い、素朴…。積極的に買い求めたくなるような存在感がある商品は少なかった記憶がある。でも実は品質にすごくこだわった、障がい者だからこそ出来る少量多品種のものづくりが行われていた。大量生産大量消費のひずみが明らかになりつつある現在、障がい者施設の存在は未来型産業のヒントになるのではないか。
佐賀市内を中心に14の障がい者就労支援施設が参加した商品開発と販路拡大のための事業「きらめきセレクション」。料理研究家や市民ら50人が審査を担当した初の品評会が8月、佐賀市内で開催されていた。同事業はNPO法人「佐賀中部障がい者ふくしネット」(古川善己理事長)が佐賀市の補助を受け企画運営。品評会には弁当やお菓子などの食料品から手芸・工芸品まで31商品が出品された。
プレゼンでは各事業所の担当者が商品の特徴を発表した。そのほとんどに共通するのが、手間を惜しまず品質を第一に考える姿勢だ。実際に試食してみても、どれも一般に販売されているものと比べ遜色なく、魅力的な商品が多いことに気づかされる。特に興味をひいたのはたくさんの種類の商品を少量ずつ作っている事業所だ。
音楽の世界で国民的ヒット曲が生まれなくなったことが象徴するように、現在は1つの商品がたくさんの人に受け入れられることが少ない時代だ。それぞれの基準で良いものを選び楽しむ。そのためには受け手に合わせ柔軟に商品開発ができるような生産体制が必要になる。
障がい者施設の利用者は従来型の産業には向かないかもしれないが少量多品種のものづくりには合っているのではないか。「きらめきセレクション」の商品には、その可能性を感じさせるものが少なくなかった。
昨年度、県内の小規模福祉作業所で働く利用者の月額平均工賃は約1万6千円。魅力的な商品を作り、しっかりした販路を開拓することで、利用者の工賃をアップさせる。「きらめきセレクション」事業の目的はそこにある。
障がい者施設の中で、どんな魅力的なものづくりが行われているのか。それを知ることで、受け手はより自分にあった商品を、作り手はより多くの報酬を得られる。良いものを通じてできた関係性は、いろんな壁を軽く乗り越えるだろう。「きらめきセレクション」の中から可能性に充ちた3商品を紹介する。